第10章 不具合の原因をつきとめる方法


もし自作したポンセットマウントの追尾に不具合があった場合、どこがわるいか判定し、修正しなければならない。それにはどうすればいいのだろうか?主な不具合はつぎの3点である。

1極軸の狂い(ふらつき)
2駆動の不具合
3剛性不足

                                   


1極軸の狂い(ふらつき)
ポンセットは実極軸がないため追尾中、極軸(仮想)が不安定に動きやすいものだ。セクタレールが理論上の滑らかな曲面に仕上がっていなかったり、受け車輪が偏心していたりわずかな凹凸があれば、極軸が不安定にゆらゆら動く不具合が起こる。(さらに2レール式ポンセットマウントには本質的な問題もある)不具合箇所をどうやって見つければいいのだろうか?

それにはうまい方法がある。極軸望遠鏡を利用する方法だ。極軸望遠鏡を可動台に取り付け、フリーで回転(駆動を切り、揺動させる)十字と遠くの景色がどう動くか観察しながらアジャスタボルトを調節する。幾度か繰り返し、十字の中心が示す景色が可動台を揺動(回転)しても動かなくなればポンセットの仮想極軸と極軸望遠鏡の心が完全一致している。

もしそのようにならなかったり、一部で妙に動く場合、極軸がふらついている証拠だ。まずレールと車輪の接触を確かめなければならない。次に変形だ。もしセクタレールの理想曲線が真円で、摺り合わせまでやっているならレール単体は真円に出来ているはずだから、鏡筒などの荷重や締め付けで変形していたりしていないかなどを疑うべきだろう。ダイヤルゲージなどで調べ、適宜、補強や修正をしなければならない。また、冗長な部分がないか、や車輪の偏心や凹凸も改善すべきだ。筆者は車輪は市販のベアリングの外輪を直に使用しているが精度的には満足できる。追尾時間を欲張って受け車輪の間隔を狭め過ぎ、セクタレールが浮き不安定な動きになったこともある。


北極星で極軸を合わす方法(簡単)
南、東西の星を追尾して極軸の修正をする方法が一般的なようだが、北極星が見える環境ならば、もっと簡単な極軸合わせの方法がある。100〜200倍くらいで北極星を視野中心にいれ10分くらい追尾しながらどの方向に変位があるかを記録しておく(わずか10分でも、極軸が狂っていると北極星の変位ははっきりわかる)。北極星が上下に動けば極軸が左右にずれている。左右に動けば上下にずれている。何度か繰り返せば動かなくなるだろう。(修正をくりかえしても動きが止まらないのであれば極軸そのものがふらついている)この方法は追尾速度の誤差が無視できるし、上下左右一気に修正できるうえ、直感的で勘違いがすくないため能率的だ。その上、極軸のふらつきも同時に見つけられるからお奨めだ。どうしてこんなに簡単な方法が知られていないのだろうか不思議だ。ぜひ貴方のポンセットを確かめていただきたい。


2駆動の不具合

駆動速度の不一致
眼視でも高倍率(200〜300倍)のガイドアイピースを利用すれば比較的短時間(1〜10分)に駆動速度の不具合の判定が可能だ。最終的には天体撮影して確かめなければならない。天の赤道あたりを撮影し、追尾しているものが止めたものと、同方向にずれる成分がないかを判定する。もしあれば駆動速度に関連した不具合があることがわかる。撮影の始まりと終わりがわかるよう工夫(鏡筒をわざと叩いたりして)するとなお判りやすい。

駆動速度の許容誤差
どの程度の駆動誤差が許されるか?結論からいえば眼視では1パーセントくらいの誤差があっても殆ど問題とならない。仮に10分の追尾したとしても、誤差=(15*60*60)*(10/60)*0.01=1’30”だ。これは月の視直径のわずか20分1程度だ。眼視では不満に感じることはないだろう。月自身だって恒星速度と1/29.5=0.033、3パーセント以上の差がある。筆者は当初タンゼントスクリュー方式だったので1パーセント以上の誤差があったが眼視で不満を感じたことはなかった。

しかし、写真撮影ならばこんないいかげんなものでは全く使い物にならない。厳密な駆動速度の一致が必要だ。写真ならば最低5分の露出が必要で、この間のズレが2”くらいでなければならない。この場合の誤差は=2*60/(15*5*60*60)=0.00044=0.044パーセントである。筆者の例で言うと、駆動セクタギアの半径が344mmであるから、誤差はわずか0.15mmしかが許されないことになる。これは作りっぱなしではとうてい達成できない数字であることは判るだろう。駆動速度を微調整のできるようにしなければならない。

直角方向にズレるようなら極軸に問題があるので極軸を合わしなおさねばならない。不規則に曲がるのは極軸のふらつがあるためだ。それを直してからやり直すべきだ。

ピリオデイックモーションエラー(PE)
これは詳しく後述する。

3剛性不足
ぐらぐら揺れるような柔な台では役に立たないのは当然である。ドブ架台単独使用と比較してどうしてもポンセットを追加すると、ぐらぐら揺れやすくなるとよく聞くが、できれば単独使用と遜色ないような剛性を持たせたいものだ。剛性不足で悩んでいたらガタつきだったということもある。剛性不足についての詳細は5章を参照ねがいたい

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