第13章 ピリオディックモーションをキャンセルする方法(PEC)


筆者の最終減速はウォーム、セクタギヤ方式でウォームの回転が1RPMのため1分間に1回の割合でピリオデイックモーションエラー(PE)が発生する。当初約+-20”程度で、これでも眼視には充分なのだが、写真撮影には甚だぐあいがわるい。というのはデジタル写真撮影では1〜4分の露出が適正露出なのでPEの影響をもろに受けるからだ。そこでこれを小さくすべくいろいろトライすることとした。


摺り合わせ

これにより格段にスムーズな動きとなり(PE)も小さくなった。これで上記の値+-10〜”が得られるようになった。しかしこれでも1000mmの直焦点撮影では明らかに星像の流れがみられる。この10分の1位なら完璧なのだが。思い当たることは一応すべてやってみたのがこれ以上の改善はみられなかった。PEの測定は実際の天体の動きを写すしか方法がない。アクションをとって効果を確かめようにも天候が悪いとお手あげだ。もし読者がPEを測定するもっといい方法を知っていて、自ら確かめたことがあるならば、ぜひ公開して欲しい。

ピリオディックモーションをキャンセル(PEC)

そこで正攻法は一旦打ち切り、筆者もPECに手をだすことにした。アイディアはずっと以前からあったのだが、これまで極軸のふらつきなどがあったためPEの測定が正確でなかったこともありいままで実行を見送っていたものだ。

ピリオデイックモーションは追尾速度が大きくなったり小さくなったりする現象であるから、これをキャンセルするにはウォームの回転位相を変化させればよいはずである。筆者の駆動モータは宙吊り状態で使用している。モータとウォームのカップリングを故意にずらし偏心させると1回転に一回みそすり運動をする。これが回転止めのトルクアームを中心とした揺動を生じ、回転角が変化をし(PE)を打ち消すというものである。

どのくらい偏心させればいいのか?概算する。
1分間に動く追尾角は15/60=0.25°
一方PE/(PE)=10”は、 15*10/(60*60)=0.0416°である、ゆえに
誤差率=0.0416/0.25=0.0166
この間にモータは一回転(360°=2Πrad)するのだからモータの増減速は0.0166*2Π=0.104rad
カップリング偏心を10mmとするとトルクアームの長さ=10/0.104=96mm==100mm

これに従い製作を実行。結果(PE)は激減。測定しにくい程になった。
実際の天体撮影の結果にも反映されていることが確かめられた。下図参照。




その後星を見ないでこのPEをある程度、測定できることが判った。結構実用的なので、ここで公開しておこう。といってもごく常識的な方法だが。
ダイヤルゲージとストップウオッチを用意して、一定時間(PEの周期の1/4くらい)に赤道儀が幾ら回転するか(セクターレールが進むか)を測るだけだ。何度か測定すればそこそこ正確に測定できる。筆者の場合、
ダイヤルゲージの分解能は1/100mm、セクターレールは1分間で1.5mm進むから1/100mmは1/150に相当する。一方一分間の極軸の回転角は0.25°。つまり0.25°の1/150=0.00166°=0.1’=6”の精度だ。

その後再度摺り合わせを行い、スプリングでバックラッシュを取ったところ、PEは激減、実用上問題はなくなったので現在はこの方法は採用していない。

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